作:カイバ

「掃除をするって聞いたんだけど」


手元の漫画を素早く閉じて隠しても、見られたのは確実だった。
おにいちゃんに予定を聞かれて、部屋の掃除をするとメールしたのは、一昨日のことだった。もちろん掃除はしていた、多分…一時間前くらいまでは。本棚の整理をしてるとどうしても、ね。
…ね?

「...もしかしてメールの返信がなかったのも漫画読んでたから、ってわけか」

えっ。慌てて机の上に放ったスマホをつけるとメールが一件受信されていた。
何も言えずにそっと電源をおとして振り返ったら、おにいちゃんの顔がすぐ後ろにあってビックリした。
思わず変な声が出ると、あからさまなため息をつかれた。予定を聞かれて、返したメールに返信は来なかった。

「…だから来ないと思ったのに」
「メールの返信も返さないくらい本気で頑張ってると思った俺が馬鹿だったわ」
「ごめんなさい」

私より5つ上のおにいちゃんは、一人暮らしをしている。
たまに買い物に行ったり、ご飯を食べにいったりで会うけど、家にくるなんてめったにないから油断していた。
今はめずらしいらしい私の部屋をぐるぐる見渡している。
「まず、棚を整理しようとして全部出すあたりがもうダメ」「カーテンの色がダサい」とか、心に刺さる言葉が沢山聞こえて、はい、とかすみません、しか言えない。小さい頃から意地悪ではないが遠慮はしない人だ。あ、お土産買ってきてくれたんだ。
その箱、ってもしかして、

「それ…」
「え?あぁ差し入れ?」
「…タルト?」
「前に食いたい食いたい騒いでたじゃん」
「おぉっ、ありがとうございますっお兄様っ!」

おにいちゃんのもった箱に近寄ると、頭にドシっと衝撃がきた。おにいちゃんの手刀が私にめり込んでいる。
「部屋をかたせないようなバカが食べるものではないな」
ごもっともな一言は充分な攻撃で、勝ち誇った顔のおにいちゃんに頭を下げる。

「手伝ってください、」
「俺がいない間にダメ妹になってしまったのか、お兄さんは悲しいよ」
「ごめんなさい、でも」
「タルトを食べたいから頑張るのかぁ」
「真面目にやります、漫画も読みません!」
「はぁ。…まぁ頑張りたまえ。お前ならできるぞ、妹ちゃんよ」

手をひらひら振って部屋を出ていってしまった。
あぁ、タルトはおにいちゃんのものになってしまったかなぁ。

このとき私は、漫画をしまいきった時、「で、どれ食べるの」とおにいちゃんが現れるとはおもってなかった。
今度はいっしょにカーテンを買いにいくんだって!